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立山自然保護センターブログ

立山雷鳥沢のクマ

これまで(令和7年7月~9月)、室堂平や一ノ越・

祓堂、浄土山・室堂山近辺で30回以上も出没して

いたクマも、9月15日以降は、その目撃情報も皆無

となっています。

ただ、代わりに9月8日頃から、室堂平から2時間ほ

ど離れた場所ですが、室堂乗越から雷鳥沢にかけて

の山腹斜面に2頭の成獣クマが“滞在”するようになっ

ています。(※9月19日に1頭が尾根向こうの立山川

上流域に移動したので、現在は1匹のみです。)

時たま、このクマ達は、雷鳥坂や室堂乗越付近の登

山道を横切ることがあったため、クマの監視と登山

者の安全確保・誘導のため、山岳警備隊員と環境省

・富山県の職員が、毎日のように『雷鳥沢』まで

“出動”していました。そうした中、9月16日のブロ

グ記事写真「立山室堂のクマは何を食べているのか

?」で、ご紹介していたように、雷鳥坂のクマも、

当初、しきりに“草穂の実”をしごき採っていたので

すが、9月23日の監視出動時にて、これまでと異な

った“樹の実”(クロウスゴというブルーベリー)を

一心不乱に食べ漁っていた様子を、観察・撮影する

ことができました。これまで、

「こういった小さな樹の実を、大きな手でどうやっ

て摘み取って食べているのだろう?」

と疑問に思っていたのですが、9/23の熊監視では、

「手で樹の実がなっている枝を手繰り寄せて、顔を

左右に振って、枝葉ごと樹の実を口の中に落とし

入れて食べている。」

ということを観察することができました。

とにかく、雷鳥沢のクマ達も室堂平のクマ達と同じ

ように、人間に興味を示したり、キャンプ場に近づ

くこともなく、ただひたすら“生きるために”野生の

営みを行っているだけのようでした。

この期間、雷鳥沢では、冷静さを失った登山者が、

過度に反応して『爆竹を鳴らしたり、大声を出した

り』する混乱が生じましたが、人間の方からクマを

威嚇して興奮させるようなことは、絶対にやめてく

ださい。全く人間に敵意を向けていないクマであっ

ても、『自己防衛本能』で人を襲うこともありま

す。

クマ生息の特別保護地区である立山では、人間の方

から、節度をもって『クマとの距離』を保つ関係が

大切ではないでしょうか?

※以下は、9月23日に、安全を確保した200m以上

離れた場所から望遠レンズ越しで観察・撮影した

写真です。ブレブレのボケボケですみません。)

室堂乗越の登山道近くでのクマ(R7年9月19日)

クマが度々近づいたり横断した室堂乗越の稜線(登山道)

筋肉の塊。雷鳥沢下部でのクマ(R7年9月23日撮影)

採餌のため、雷鳥沢の上部から下部を行ったり来たりしていたクマ(R7年9月23日撮影)

雷鳥沢下部でのクマ(R7年9月23日撮影)

『クマの顔』では、個体識別は無理か?雷鳥沢下部でのクマ(R7年9月23日撮影)

この日はしきりに、低木に首を突っ込んでいました。雷鳥沢下部でのクマ(R7年9月23日撮影)

体長1.5m以上?の大きな成獣。雷鳥沢下部でのクマ(R7年9月23日撮影)

食べていたのはクロウスゴというマメ科高山植物(低木)の液果でした。雷鳥沢下部でのクマ(R7年9月23日撮影)

首を振って、口の中に樹の実を落とし込んでいました。雷鳥沢下部でのクマ(R7年9月23日撮影)

採餌中に、オシッコしていました。雷鳥沢下部でのクマ(R7年9月23日撮影)

 

 

オコジョ 投稿者特集Ⅱ(R5年~H30)

今回は、過去の投稿写真の検索・整理にちょっと時

間がかかったのですが、お約束どおり、お客様から

のオコジョの投稿写真を再公開させていただきます。

数年前まで、当センターの「立山室堂ライチョウ見

守りネット」にて、オコジョ目撃情報をこのWebに

直接投稿できたのですが、現在は、「オコジョ目撃

情報」の投稿システムが閉鎖されているので、ライ

チョウ目撃情報の投稿Webを利用して、当センター

にオコジョ写真などをご提供していただいています。

ご提供していただいた写真は、“プロ顔負け”の素晴

らしい写真も多く、みなさんに再度ながら、オコジ

ョのかわいさを楽しんでいただきたいです。

また、本年度又は、過去において、立山室堂周辺で

素敵なオコジョ写真を撮影された方は、当センタ

ーの「立山室堂ライチョウ見守りネット」やHP

公開のメールアドレスにて、情報や写真をご提供

(ご寄贈)いただければ幸いです。

H30,7,28投稿 ※フトンかごの中からこんにちわ。

H30,7,28投稿 ※おひげがカワイイ顔していますね。

H30,8,7五色が原 ※みなさんコンニチワ!

H30,9,14投稿 ※ヒョッコリと出てきました。

   R1,10,5投稿

R1,8,20投稿 ※何かにおうぞ!

R1,9,11投稿 ※岩の下から、よいしょっ!

R1,9,12投稿 ※木道の下からヒョッコリでてきたオコジョさん

R4,4,15投稿 ※タイミング、構図、内容、全てがすごい写真ですね!

R4,9,10投稿 ※立ち姿がカワイイ。

R5,5,22投稿 ※“見返りオコジョ”さん

R5,6,3投稿 ※背中だけ見えています。

 

オコジョ 投稿者写真特集Ⅰ

オコジョは、イタチ科で最も小さな種ですが、完全

な肉食性で、ネズミを主食としています。

立山室堂では、ライチョウの雛が襲われることも多

く、この『かわいい顔をした肉食獣』は、ちょっと

・・・、と敬遠される方もたまにいらっしゃいます

が、大半の人は、この“愛くるしい容姿としぐさ”に

夢中になってしまう人気者の生き物であります。

私も本年4月に室堂に入山してから、毎日のように

ずっと、オコジョを追いかけまわしていますが、

一度しか撮影することができていません。

(詳細は、R7年8月21日のブログでどうぞ。)

なかなか、オコジョの写真を撮影できないので、当

センターにお寄せいただいたお客様からの写真を再

公開することで、オコジョの魅力をみなさんにお伝

えしたいと思います。

※以下、今年度と昨年度に頂いた写真です。

令和5年以前の写真は、次回のブログにて企画てい

ますので、乞うご期待!

 

R6年6月24日 浄土山

R6年7月15日 場所不明 ※『ねずみ』ではありません!

R6年7月9日 みくりが池広場(地獄谷側)

R7年7月25日 ミクリガ池ベンチ近く ※4匹兄弟のうちの2匹だそうです。

R7年7月9日 雄山山頂

R7年8月11日 室堂山荘の石垣

R7年8月13日 室堂山途中の休憩ベンチ近く

R7年8月21日 立山自然保護センター前

R7年8月21日 立山自然保護センター前2

R7年9月13日 大日岳  ※ “足乗りオコジョ!”

 

 

ライチョウ(秋羽)の性別判定について

ここ数日、悪天候が続いていながらも、クマの目撃

情報が頻繁に入り、毎日のようにクマ警戒監視出動

をしていました。

(ブログ更新できなくてすみませんでした・・。)

昨日から“シルバーウィーク”に突入しましたが、

今日の室堂平は、すっきりしないお天気模様となっ

ています。ちょうど今、室内事務の時間を作ること

ができたので、最近、困っている“ライチョウの秋

羽”問題を整理することとしました。

ライチョウは、冬羽、夏羽、秋羽と年に三回、換羽

するのですが、9月頃からの秋羽の時期(オス:7月

中旬~、メス8月下旬~)になると、オスとメスの

区別が専門家でも難しく、離れた距離での観察では、

もはや“判別不能のカオス状態”となっています。ま

た、今まで小さかった『雛鳥』たちも、9月に入る

と、親鳥よりやや小さい『幼鳥』に成長してくるの

で、益々、混乱してきています。

秋の今頃のライチョウ観察ポイントは、

①繁殖期に顕著であったオスの肉冠(目の上の赤い

突起)は目立たなくなっているので、判別ポイント

としない。

②メスの夏羽(黄褐色の“キジ模様”)の名残りが、

腹に残っているので、腹側面を重点的に観察する。

③若鳥は、9月頃までは親鳥より“やや小さい”大き

さですので、親鳥などとの大きさの比較でわかりま

す。(8月頃までは、背中の模様などでわかります

が、慣れていないと難しいです。)なお、10月中

旬頃からは、親鳥と全く大きさが同じになりますの

で、もはや、“雰囲気”?で判断しています。

当センター窓口で、お客様に提示しています秋羽性別判別資料です。

以下、当センターの『ライチョウ見守りネット』に

投稿していただいたお客様からの過去の写真を活用

させていただいて、性別対比いたしますので、参考

にしてください。

メス①(R7,9,4)まだ、夏羽の“まだら模様”が多く残った個体。

メス②(R7,9,9)秋羽に換羽し終わったメス。※お腹に“まだら模様(キジ模様)”が残っています!

メス③(R7,9,15)この個体も、しっかりと腹側面にまだら模様が残っています。

メス④(R6,9,23)9月下旬ですが、この個体には胸と腹側面に夏羽の模様が残っています。

オス⑤(R7,9,18)黒褐色の秋羽に換羽したオス

オス⑥(R6,9,15)風切り羽の先だけが白く目立ちます。

オス⑦(R6,9,21)赤い肉冠が目立ちませんが、この個体もオスです。

オス⑧(R6,9,23)オスです。肉冠も目立ちません。

幼鳥⑨(R7,8,10)8月中旬でしたら、まだ、大きさや模様で親鳥と判別しやすい頃の写真です。

幼鳥⑩(R7,9,18)9月中旬になりますと、幼鳥から若鳥に近くなってきます。

幼鳥⑪(R5,9,23)幼鳥の頃も、意外と肉冠がはっきりとしています。※背中の黒羽の規則的な点在が幼鳥の特徴か?

若鳥⑫(R2,10,15)家族グループが合流し集団化した中の若鳥たち(幼鳥から若鳥に成長した状況。一部、親鳥が、混じっています!)

 

 

 

立山室堂のクマは何を食べているか?

昨日、9月15日(日)午後4時20分過ぎ、室堂平に

クマが出没し、ミドリガ池横の散策道などが1時間

ほど通行規制されました。

今回のクマは成獣1頭で、天狗平方面から室堂平に

上ってきたものでして、何よりも、これまでも

例のない“室堂ターミナル前近く”での出没であり、

“衝撃的”なものでした。

クマは、人を警戒することもなく、室堂園地を

早や走りで横切り、慰霊塔横の斜面からミクリガ

池上部の谷筋に下りていきました。

(人と接触することがなく、本当に良かったです。

みなさんも、クマを興奮させることなく、距離

を取って冷静に対処してください。)

その後は、谷筋を1時間ほどかけて、ゆっくりと

採餌しながら、対岸のミドリガ池の斜面を登って、

浄土沢方面に移動していきました。

この1時間ほど、望遠レンズでクマの行動を観察し

ていたのですが、クマはしきりに、草むらに口先

を突っ込み、草穂から草の実をしごき採って、

“ムシャムシャ”と音をたてて食べていました。

この時期の高山帯のクマの採餌対象は、ベニバナ

イチゴ、クロウスゴ、クロマメノキなどの樹の実

であるとされ、実際、室堂周辺でも“ソコソコ”

の量でしたら、熟した液果を見かけることがあり

ましたが、今回のクマ(8月からの大半のクマも

!)は、草(推定で、イワノガリヤスやヒロハコ

メススキなど)の穂状の実を食べていました。

9月の後半からは、脂肪分の高い、効率よく栄養

を摂取できるミズナラやコナラなどのどんぐりを

食べに山地帯に下りていくとされていますが、

室堂平の今年のクマたちは、どうするのでしょう

か?

以下は、R7,9,15夕方のクマの観察写真です。

R7,9,15 PM5:00~PM6:00(ミクリガ池上部の谷筋)

草(草の実)をムシャムシャ、音を立てて食べています。

体格の良い大きなクマです。(足裏は柔らかそう!)

毛並みも良さそう!

鋭いツメもはっきりと見えました。

しきりに、草むらに口先を突っ込んで草の実を食べていました。

イネ科(イワノガリヤス?)の植物を食べている様子。

エサの無い岩場は“早歩き”のスピードで移動。

このフグリは・・・・。オスかも? しっぽは長くないです。

ハクサンボウフウとイワイチョウの草付地。ここで、何の草を食べていたのかは不明。

月の輪が見えそうで見えない写真!

夕陽を浴びた対岸のクマ。ミクリガ池上部の沢筋から斜面を登って、ミドリガ池園地散策道に達した状況。